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EVは究極のエコカー?

2018年01月04日

究極のエコカー?EVは矛盾を乗り越えられるか

 英国、フランスが2040年をめどにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を決め、電気自動車(EV)に切り替える動きが進んでいる。EVが二酸化炭素(CO 2 )を排出せず、「環境にやさしい」とされていることが背景にある。日本でもEVの普及が進みつつあり、ガソリンスタンドは減る一方で、世の中には「エンジン車はいずれなくなる」という風潮が生まれ始めた。すべての車をEVにすれば、本当に「環境にやさしい」社会が実現するのだろうか。自動車の内燃機関(エンジン)や内部構造に詳しい研究者の畑村耕一氏は異議を唱える。


写真はイメージです
◆「EVブーム」火を付けたのは日欧の技術戦争

 最近の「EVブーム」の発信源とは、実は自動車のパワートレーン(エンジンなどで発生した回転力をタイヤに伝える仕組み)技術をめぐる日欧の激しい競争だと筆者は考えている。

 2015年にフォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車で、排出ガス規制をめぐる不正が発覚した。VWが排ガス規制を不正に回避するソフトウェアを使っていたことがわかったのだ。排ガス試験が行われていることをソフトウェアが検知し、その時だけ有害物質を取り除く浄化装置をフル稼働させるという悪質なものだった。

 他の欧州メーカーのディーゼル車も不正はなかったものの、(試験ではない)実走行での排出ガスの有害物質が規制値を大きく超えていることが明らかになった。これで、CO2に関してはガソリン車より「地球にやさしい」とされているディーゼル車は完全に信頼を失ってしまった。


東京モーターショーのフォルクスワーゲンのブース。現在は電気自動車の開発に注力している。

 地球温暖化防止が世界的課題となる中、CO2規制を乗り切るための切り札だったディーゼル車を失った欧州メーカーが目を付けたのは、電気とガソリンの両方を使えるプラグインハイブリッド車(PHV)だった。欧州では、あるCO2排出規制を発表した。メーカー側のロビー活動が奏功したとの見方もある。

 21年から適用されるこの排出量規制では、PHVが有利となるように「ECE R101」という欧州の特別な燃費測定法が適用され、電力による走行時はCO2の排出を「ゼロ」とみなす。この測定法では、50キロ・メートルのEV走行ができるPHVは、計算上(カタログ値)のCO2排出量が3分の1に軽減されるのだ。欧州の各メーカーは実質的にこのルールを追い風に、PHVをどんどん送り出している。

 欧州のPHVは、先述の基準を満たすのが主な目的のため、電力のみでの走行が終わった後は、HV走行に切り替わるが、その際の燃費はガソリン車に比べ多少良い程度だ。日本のPHVやHVのようにエンジン走行とモーター走行を頻繁に切り替え「最適制御」する車とは「似て非なるもの」と言っていい。

 だが、それ以上に強く指摘したいのが、EV走行時も火力発電所などで発電した電気を使うわけだから、間接的にCO2を排出する可能性があることだ。


◆「CO 2 削減は建前」か?

 1980年代の日本の自動車メーカーは大量生産技術で欧米のメーカーに追いつき、90年代に入るとあらゆる関連技術で日本の企業が世界の最先端を行くようになった。日本のメーカーの視線は、エンジンとモーターの力を併用する「ハイブリッド車(HV)」の開発に向かった。

 日本の技術力に驚いた欧州は、複数のメーカーが共同で資金を出し合い、いかに対応すべきかで本格的な共同研究を始めた。その中で、日本との競合を避けられるディーゼルエンジンに注力した。

 しかし、VWの不正が発覚。焦った欧州メーカーは日本勢がトヨタを中心にHVに注力する中、猛烈な勢いでPHVを普及させようとしているのだ。

 日本のトヨタ、ホンダ、日産のHV技術は着実に進化している。世界最高クラスの燃費を実現した最新のトヨタ・プリウスの実質的な燃費は、ガソリン1リットル当たり20キロを大きく超えると見られる。

 さらに、エンジンの領域ではマツダがリードしており、ガソリンエンジンの燃費も大幅に向上させている。19年には、従来より燃費性能を約3割高めたエンジン「スカイアクティブ-X」を投入予定だ。マツダはクリーンディーゼルエンジンでも排出ガスを最小限に抑える技術の開発に成功している。

 このような背景を考え合わせると、欧州各国の動きはあたかも、PHVを除くエンジン搭載車を締め出す動きのように見えてしまう。「CO2削減」はあくまで建前で、自国の産業を保護したい、というのが欧州各国のEV熱の本質なのでは、と筆者は見ている。

 中国は19年から自動車メーカーに、製造・販売台数の10%をEVなどにするよう義務付ける「新エネルギー車法」を導入する。筆者は、こちらにも同じような狙いがあるのではないかと思っている。現在、中国国外でほとんど販売されていない中国車の存在感を高めたい思惑もあるのではないか。

 内燃機関を必要としないEVの構造は単純だ。日本が得意とする繊細な技術、たとえば部品などに微妙な調整を加えて複雑な機構を組み上げる「擦り合わせ」の技術は必要ない。家電と同じで、中国企業の独壇場になる可能性が高い。


◆EVの魅力と課題

 筆者も、EVの技術そのものに否定的なわけではない。約40年前にはEVの開発に関わったこともあるのだ。

 当時は、軽トラックの荷台の裏に目いっぱい、鉛のバッテリーを積んで、20~30キロ走行させるのがやっとだった。しかし、低速からトルク(回転力)が発揮でき、静かでスムーズに走るという点には惚(ほ)れ込んだ。その後、ガソリンエンジン開発で低速トルクにこだわったが、原点にはEV開発の経験があった。

 「電池の寿命が短い」「航続距離が短い」「充電に時間がかかる」など、EVの課題はたくさんあるが、技術の進歩によってこれらの問題点は改善されるだろう。将来は充電設備などのインフラも整えられて、その素晴らしく快適な走りを多くの人が感じれば、一定数まではEVが急速に普及していくと思う。

 しかし、日本に関して言えば、筆者はEVの普及に対し危機感を感じている。


EVのCO2排出量の計算は電源構成の変化を考慮する必要がある
◆EVが普及しないなら火力発電所が減らせる?

 EVの環境負荷を考えるには、EVが普及した場合の発電所からのCO2の総排出量と、EVが普及しない場合の総排出量の差を考えることが重要だ。

 資源エネルギー庁が示している2030年度の発電計画に基づいて、EVの普及も想定した発電所からのCO2排出量を算出すると、図のように石炭と天然ガスの火力発電所からの排出が大部分を占める。一方、仮にEVが普及しなければ総発電量は減少するので、発電所からのCO2排出量も少なくなる。

 日本を含む世界各国では、全発電所から排出されるCO2の量を全発電量で割った電源平均のCO2排出量原単位(1キロ・ワット時の電気を発電した時のCO2排出量)に、EVの電力消費(1キロ・メートルを走行する際に消費する電力量)を掛けて得られる値を「EVのCO2排出量」とみなす計算法が使われている。

 この計算法は、EVの充電はすべての電源からまんべんなく電力を得ているとみなしており、「EVの普及の有無は、将来計画されている電源構成には影響しない」という仮定に基づいたものだ。しかし今後、EVが急激に普及した場合、石炭などの火力発電で補わざるを得ない可能性もある。そう考えると、この仮定は非現実的だと筆者は見ている。

 自動車検査登録情報協会の集計では、17年9月末時点の国内の自動車保有台数は約8190万台だ。30年に国内でEV1200万台分(EV800万台、ガソリンを使った走行が3分の2を占めるPHVが1200万台)が普及したと仮定すると、EVの充電に必要な電力量は年間220億キロ・ワット時となり、国内の総発電量の2.2%に相当する。

 これをすべて、国全体の使用電力量が減る夜間の8時間で充電するとしても、100万キロ・ワット級の発電所8基が必要で、このインパクトは相当だ。この分の電力をどう調達するのか。電源構成の変化を考慮したEVのCO2排出量の新たな計算法を確立する必要がある。


◆EVを普及させつつ、CO2排出量を減少するためには?

 ところで、EVを普及させる一方、CO2の排出量を低減させるためには何がカギになるのだろうか。

 一つはもちろん、再生可能エネルギーの普及。そしてもう一つは「EVの充電中に同じ電力系統の中で(よりCO2排出量の多い)石炭による火力発電所が稼働していないこと」である。

 2015年度時点で国内の総発電量の約32%、3分の1弱が石炭火力だ。電気事業連合会によると、石炭火力による発電1キロワット時当たりの二酸化炭素排出量は943グラムと、石油火力(738グラム)、液化天然ガス(LNG)火力(599グラム)と比べても突出して多い。このため、石炭火力で発電した電力でEVを走らせると、発電所からのCO2排出量は従来のガソリン・ディーゼルエンジン車が排出するCO2の量と大差ない。

 火力発電所の寿命は45年程度。30年度の発電計画でも、石炭火力発電は26%を占めるとされている。火力発電所など大量にCO2を排出する施設向けに現在開発が進められている、地下1000メートル以上の「帯水層」などにCO2を貯留させる「CCS」も普及は30年以降になる見通しだ。

 このため、今後政策的に脱・石炭火力を進めたとしても、30年時点ではCCSのない石炭火力がたくさん残るのは確実だ。これは一部を除いた諸外国にも当てはまる。

 再生可能エネルギーについても触れておきたい。風力発電によって夜間に余剰電力を生み出せる場合は、その電力でEVを充電すればCO2削減に貢献できるだろう。一方、太陽光発電による昼間の余剰電力を蓄電してEVの夜間充電に使う案を唱える人もいるが、蓄電した電力はEVに使うより、石炭火力を減らす目的に使う方がCO2削減になるので根本的な解決策にはならない。

 EVを利用して効果的にCO2削減を実現するには、再生可能エネルギーによる電力が文字通り余剰になって、電力を「捨てなければならない」時代が来るのを待たねばならないと筆者は考えている。その時に備え、日中にEVを充電するような仕組みを真剣に考える必要がある。一方、風力発電の普及を積極的に進めているスペインでは、将来的に夜間の余剰電力で650万台のEVを充電できる環境を目指している。






引用元の記事はこちら(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180104-00010000-yomonline-life)


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