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「WHILL(ウィル)」の5㎝の段差を乗り越える電動車いす

2020年05月27日

「電動車いす」のニーズが障害者に限らない真因

「電動車いす」のニーズが障害者に限らない真因

車いすを自動運転化したベンチャーの挑戦


「WHILL(ウィル)」という会社をご存じだろうか。スタイリッシュな電動車いすを販売するベンチャー企業だ。しかも、このベンチャー企業は、熱心に自動運転の実証実験を行っているという。

車いすが次世代モビリティになるだろうか。なぜ、車いすのメーカーが自動運転なのか。WHILLを取材した。


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訪れたのは、WHILLの最新モデルが用意されているという大手町のサテライト・オフィス。1フロアにベンチャー企業などのオフィスがぎっしりと並んでおり、それらオフィスのミーティングスペースで、実機に触れることができた。

試乗できたのは最新モデルの「WHILL Model C」であった。デザインは、従来のパイプいすに自転車の車輪をつけたようなものとは異なり、大きく雰囲気が違う。4輪の台車の上にいすが乗っているような構造だ。この製品は、車載しやすいように分解できるという。

バラしてもらうと、その構造がよくわかる。いすは座面の下に軸があり、まるでオフィスチェアのよう。車輪を備える部分は金属のパイプでフレームができており、それを樹脂がカバーしている。

前後左右に自由に動くオムニホイール



駆動は、後輪の内部にあるインホイールモーターが担う。左右の車輪に内蔵されたインホイールモーターを個別に作動させることで、前後だけでなく左右にも動く。前輪は駆動とは関係なく、しかも転舵もしない。それなのに抵抗にならないのは、オムニホイールという特殊な車輪を採用しているからだ。


24もの車輪を組み合わせたオムニホイール。前進・後退だけでなく、横方向にも回転することで、車いすが、その場でターンすることが可能になる(筆者撮影)
オムニホイールは、転舵しなくても前後左右に抵抗なく進むことができるもの。この構造が、WHILLの製品の最大の特徴だろう。

この電動車いすは、前輪が大きいため段差を超える能力が高い。一般的な車いすがクリアできる段差は2~3cmと言われるが、オムニホイールであれば、最大5cmの段差を乗り越えられるという。さらに重量バランスがいいので、上り坂での安定度も高い。

試乗してみると、操作は非常に簡単だった。



左側のひじ掛けの先の、ちょうど手のひらが当たる部分に、主電源と速度域を変えるスイッチがある。速度は4段階から選べ、最高速度は時速6㎞。じわじわとゆっくりした動く速度から、速足くらいまでをカバーする。


前進後退・左右は、右側のスティックで行う。握る部分が大きいので、スティック(棒)というより、マウスっぽい。そのマウスを操作すれば、その通りに動くのだ。

ルックスがスタイリッシュというだけでなく、段差や上り坂に強く、しかも小回りも利く。それでいて操作も簡単。価格は、最新のWHILL Model Cで45万円。介護保険レンタルなら月額約3000円。2014年の初期モデルの発売開始から、これまですでに1万台近くを販売してきたという人気も納得の内容だ。

前後に進むだけでなく、その場でのターンもきれいに決めることができる。実際にWHILL Model Cのオーナーに、ダンスのような華麗な動きを見せてもらえた。手首が動く人ならば、操作が難しいと感じることはないだろう。

電動車いす+自動運転で何ができる?

WHILLは、2018年9月に約50億円の資金調達を発表した際、「今後はMaaS事業成長を目標にする」とアナウンスした。そして、翌2019年1月にラスベガスで開催された「CES2019」において、電動車いすに自動運転機能を備えた「WHILL自動運転システム」を発表。2月からは、さまざまな実証実験をスタートさせている。

最初の実証実験は、三菱電機株式会社と株式会社Liquidと組んで行われたもので、エレベーターと建物のセキュリティーシステムの連携を図るもの。


左右のアーム部に設置された2つのカメラと後方を監視するセンサー、通信機器を組み合わせることで自動運転を実現(写真:WHILL)
スマートフォンで呼べば、無人のWHILL自動運転システムが、エレベーターを使ってやってくる。さらに、建物のセキュリティーエリアの内外を、セキュリティーシステムと連携して、WHILL自動運転システムが自由に出入りするという実証実験であった。

また、同じ2019年2月には神奈川県横浜市みなとみらい地区で、シェアリングの実証実験を実施。さらに5月になって、オランダのアムステルダム・スキポール空港での自動運転システムの実証実験を開始している。これは、空港内でシェアリングとして貸し出されたWHILL自動運転システムが、ユーザーの利用後に、無人で貸し出した場所まで戻ってくるというものだ。

なぜ、空港に電動車いすのシェアリングが必要になるのか。また、なぜ、その電動車いすに自動運転機能が必要なのかというのが、ポイントだろう。


電動車いすの利用ターゲットは、障害者に限らない。普段は車いすを使わない人であっても、長距離を歩くのが辛い人が多いというのだ。

国土交通省の調べによると「無理なく休まずに歩ける距離」は、65歳以上の場合、「500mまで」という人が26%もいる。広い空港の場合、500m以上歩かなければならないケースも多い。そのため空港では、長距離を歩けない人への支援策を用意している。たとえば電動カートが巡回する空港もある。

しかし、それにかかる費用や人手を少しでも減らしたいのは、どこの空港でも共通の願いだろう。それを解決するのが、自動で貸した場所に戻ってくる電動車いすのWHILL自動運転システムとなるわけだ。


時速3㎞ほどで、貸し出された場所に無人で戻ってくる「WHILL自動運転システム」。人ごみの中で、人とぶつからずにスムーズに動くことができる。2020年度中の実用化を予定するという(写真:WHILL)



WHILLでは、2019年5月のアムステルダム・スキポール空港を皮切りに、11月の羽田空港とアメリカのダラス・フォートワース国際空港、12月にアラブ首長国連合のアブダビ国際空港とカナダのウィニペグ国際空港と、5つの空港での実証実験をのべ9回実施している。人ごみの中を自動でWHILL自動運転システムが無事に帰ってくることを確認したのだ。

その利用者は300人にもなり、ニーズが確かに存在することもわかった。そうした結果をもとに、WHILL自動運転システムを2020年度中に実用化する予定だという。

なぜ、WHILLが次世代モビリティを目指すのか?

WHILLは、2012年5月に設立したばかりのベンチャーだ。2014年に最初の製品「WHILL Model A」を発表。2016年に北米向けのモデルが、アメリカFDA認可を取得。

2017年には普及版となる「WHILL Model C」を発表。翌2018年に北米向け「WHILL Model Ci」を発売し、欧州でも「WHILL Model C」の発売を開始した。

今では日本とアメリカ以外にも、世界の12の国と地域で発売されている。新しい電動車いすメーカーとしては、順調そのものだ。

しかし、ここで自動運転にまで手を広げるのには、どういった理由があるのだろうか。

「それは“すべての人の移動を楽しくスマートにする“という弊社のミッションが理由です」と広報マネージャーの辻(一点しんにょう)阪小百合さんは説明する。

もともとWHILLは、20代のエンジニアやデザイナーが会社をまたいで作ったサークル的な活動からスタートしている。最初は電動車いすを作るつもりではなかったのだ。



「初期のうちから『電動車いすで送迎ができるといいよね』と話し合っていました。MaaSという言葉が後から来た感じですね」と辻阪さん。つまり、最初から目指すところは変わっていないのだ。


創業前の2011年の東京モーターショーに出品された最初のコンセプトモデル「WHILL Prototype」。ソニーやオリンパス、日産自動車などの若きエンジニアやデザイナーが集まって作り上げたパーソナル・モビリティだ(筆者撮影)


「今までModel AやCを開発していたときは、『個人の移動を楽しくスマートに』というものでした。これからの5年は、楽しくスマートに行ける場所を増やすことが目標です。たとえば、空港はスマートに動けるとか。今は、そういう場所を点で増やしていく段階。すべての場所で、すべての人が楽しく、スマートな移動ができる。それが30年後、最終的な目標です」(辻阪さん)

空港だけでなく、公園や美術館、観光地などにWHILL自動運転システムを配置することで、障害者に限らず、誰もが簡単に利用できるようになる。WHILL自動運転システムがパーソナル・モビリティとしてインフラになる未来を目指すというのだ。

社会問題を解決するビジネスに

車いす、しかも電動となれば、重い障害のある人のためのもの。そんな思い込みが、間違いであることを思い知らされた取材となった。なるほど、障害者ではなくても、長距離を歩くのが辛いという人は、確かに多い。そんな人が、シェアリングで気軽に利用できるのであれば、電動車いすを試そうと考える人は多いはずだ。

しかも、自動で貸し出した場所に戻ってくるのであれば、提供する側も人的リソースの負担が小さい。障害者だけでなく健常者の利用を前提にすることで、利用シーンが広がり、それに伴って電動車いすの販売も伸びることだろう。社会の問題解決が、そのままビジネスに結びついていたのだ。




引用元の記事はこちら(https://toyokeizai.net/articles/-/338841)


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