2018年09月17日
薄利多売の構造が生み出す、大量の衣服廃棄処分という現実。
薄利多売の構造が生み出す、大量の衣服廃棄処分という現実。消費者も意識を変えよ
近年、各国で問題になっている膨大な量の服飾ゴミ。大量に廃棄処分されてしまうメカニズム、そして消費者はいったい何を考えて商品を選ぶべきか、ウエアの多くをお直しに出しながら10年は着ているというアウトドアライターのPONCHO氏が分析した。
◆日本でリサイクルされる衣類ゴミはわずか10%
現在、製造された衣服の50%は、廃棄処分されていると言われています。少なく見積もっているデータでも、40%前後。ということは演繹的な表現をすれば、私たちが購入して着ている服は、半分ゴミのようなものだと言えるでしょう。
今年7月には、「BBC」が英国の有名ブランド・バーバリーが42億円相当の売れ残り商品を焼却処分したと報じています。
記事によると、バーバリーをはじめとする高級ブランド各社は、盗難や安く売られることへの対策として、売れ残った商品を破壊処分しているそうです。
また、昨年にはファストファッションを代表するH&Mがデンマークで毎年12トンの売れ残り衣類を焼却処分していたというニュースもありました。皮肉なことに、H&Mは店頭で着なくなった衣類を回収するプログラムを実行し、ファストファッション・ブランドでありながら、環境にやさしく、持続可能なファッションを掲げているブランドでもあります。
日本でこういったニュースを見て、「海外の有名ブランドはもったいないことをするなぁ……」と他人事のようには思っていられません。
日本が1年間に排出する衣類ゴミは100万トンと言われています。リサイクル/リユースされるのはそのうち10%程度で、残りの90%は焼却処分されているそうです。この衣類ゴミ、実は購入され、着古された服がゴミとして出されているだけでなく、先に取り上げた海外ブランド同様に、新品の服が廃棄・焼却処分されているといいます。「朝日新聞」の報道によると、その数は「年10億点」にものぼります。
◆利益を出すため処分する負のスパイラル
では、なぜ新品の服がそのまま廃棄、処分されるのか? 繊維総合商社に勤めるAさんに話を聞きました。
「日本の小売店が1年で生産した商品のうち何割が購入されているかご存知でしょうか? いろいろな統計が出ていますが、約50%が購入され、残りは売れ残ります。では、なぜそれだけの数量を作るのか? 答えは極めてシンプルです。製造原価を安くしたい、安くしなければ小売業の経営が成立しないからです」
Aさんが入社した’00年頃、ひとつの商品の寿命は約10か月。それが現在では約4か月にまで縮まっているそうです。調べたところ、ファストファッションの現場では、なんと3週間という数字もありました。
この商品寿命とは、企画立案から、製造、販売を経て、商品が売れなくなるまでの期間を指します。仮に製造を1か月で行ったとして、現在では3か月たてば売れない商品となってしまうのです。
「商品寿命が短くなると小売業者がどういう対策を取るかといえば、販管費に経費をかけます。メディアへの露出を増やし、購買を煽るわけです。自ずと小売業者は経費を抑えるため、我々サプライヤーに対して、製造原価を抑えるよう厳しく要求します。そうなると、今度は我々サプライヤー側が小売業者に対して多くの数量を扱ってくれるよう要求します。そうすることで製造原価を下げるんです」(Aさん)
原価を抑えるため、製造する数量を多くする。必然的に商品は売れ残る。売れ残った商品を在庫として持っていると経費がかさむので、廃棄処分する……。
しかも、Aさんによれば、旬が過ぎて季節ごとに処分するのではなく、単に利益を出すために処分しているそうです。数シーズンに一度、儲けが出た年に不良在庫を消しているのが現実なのです。
「よくブランドの価値を守るためと聞きますが、それは詭弁です。もしブランドイメージを守るためというのが事実なら、例えば大きな災害が起きたときに支援物資として提供してもよいと思いませんか? 今年、西日本で起きた『平成30年7月豪雨』でZOZOTOWNが衣類を提供したことは、業界ではかなり珍しい例です」
では、どうしたらこの負のスパイラルを解消することができるのか? Aさんは諦め顔でこう語ります。
「AIを活用したスマートファクトリーなどの対策を行っていますが、まだ道半ばです。正直、現在のアパレル業界の仕組みでは、廃棄処分を減らすことは到底無理でしょう」
こうした現実を踏まえると、アパレル業界に期待しても仕方がありません。だとすれば少しでも変わるべきは、私たち消費者でしょう。大量生産、大量販売、大量廃棄を助長する使い捨て商品を極力買わないことから始めるのも、ひとつの手です。
◆「安い買い物=賢い消費者」の時代は終わった
10代や20代の若者なら流行の服を安く手に入れたいと思っても仕方ありません。しかし、30代、40代という年齢になってきたら、自分のファッションを確立し、流行に左右されない服選びの基準を持つようにしたいものです。そして少しでも安く購入することが賢い買い物だという考えを、改める必要もあると思います。
買い物=消費行動は、個人の欲求を満たすためだけに行うものではなく、社会や地球環境をよくするために貢献できるものでもあるのです。
例えば、アウトドアブランドのパタゴニア。スーパーモデルが着用したりしていることで、高級ブランドのイメージがあります。
一方で多くの農薬や殺虫剤を栽培に必要とする通常のコットンではなく、手間やコストがかかるけれども環境にやさしいオーガニックコットンをいち早く製品に採用している部分は評価されるべきでしょう。
’05年からは着古したフリースを店頭で回収し、リサイクル。近年では、まだ着られる製品はユーズド製品として販売もしています。
今回、この記事を書くにあたってパタゴニア日本支社に問い合わせたところ、「在庫となった商品はアウトレットで販売、何らかの形で使われる方にお渡しし、廃棄や埋め立て、焼却といった形での“処分”は行っておりません」と回答がありました。
大量生産、大量販売、大量廃棄に疑問を抱き、環境にやさしいモノづくりに取り組んでいるのは、パタゴニアだけではありません。日本メーカーのなかでも少しずつではありますが、増えてきています。
いずれもファストファッションの服に比べれば、安いとは言えません。しかし、売れればいい、売れなければ廃棄処分すればいいという考えで作られた服でもありません。少しでも長く、愛してもらえるような想いが込められた服です。
私たち消費者も、服やモノを単に消費して使い捨てするのではなく、お直ししたり、大事に扱って、長く愛していきたいものです。
一着の服を買うということ……。それは、この先の未来から、「それは本当に必要なものなのか?」と問われているのだということを意識しなければならない時代になっています。
<取材・文/PONCHO>
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