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カキの新ブランド「くにさきOYSTER」はヤンマーが手掛けて

2018年06月10日

なぜヤンマーはカキ養殖に取り組むのか?

 昨今、日本でもオイスターバーなどが増えていて、新鮮な生ガキなどを手軽に口にする機会は多いが、ちょっと思い浮かべてほしい。店で提供されるカキの多くは大ぶりで肉厚なものではないだろうか。

 元々、カキフライや鍋物の具材など、加熱して食べる文化が日本では根付いているので、多くはむき身で流通していて、食べ応えのある大きいものが好まれる傾向にあった。一方、欧米でカキと言えば生食が主流。しかもサイドメニューとして食べることが多いので、殻付きで小ぶりのタイプが一般的である。

カキの新ブランド「くにさきOYSTER」はヤンマーが手掛けている

 そうした背景から、日本のカキ生産者の多くは、できるだけカキが大きくなるように生育してきた。その結果、たとえ品質に優れていても小さなカキは業者などからほとんど見向きされないという状況が生まれてしまった。「大きくなければカキは売れない」と話す生産者もいるほどだ。

 そうした中、あえて小ぶりでフレッシュな味わいの生食向けカキを生産して、日本の食文化に新風を吹き込もうと力を入れているのがヤンマーだ。

 「ヤンマーがカキ作り?」と驚いた人もいるだろう。ヤンマーは農業機械や船用エンジンなどを手掛ける産業機器メーカーとして知られるが、実は数年前からカキの養殖に取り組んでいて、2015年末から東京都内のオイスターバーやレストランを中心に本格的な出荷を始めているのだ。現在の出荷量は週に5000~1万個に上る。
ヤンマーがカキ養殖を始めた理由

 大分県国東(くにさき)市――。

 県北東部に位置する国東半島のほぼ半分を占めるこの地域では、以前から太刀魚(たちうお)やタコなどの漁業が盛んだ。ただし近年は漁獲量が減少、2013年は1784トン(出典:農林水産省統計部)と、この20年間で半分以下に落ち込んだほか、後継者不足などもあいまって漁業全体は年々低迷を続けている。市としても地域活性化のための産業育成が喫緊の課題だった。

国東半島の東側には伊予灘が広がる

 そうした中、これまで生産実績のなかった国東でカキの養殖を始めるとともに、カキの産地としてのブランド化にも乗り出した男がいる。ヤンマーの水産研究開発施設「マリンファーム」で所長を務める加藤元一氏だ。カキに携わることおよそ30年、自らを“カキばか”と呼ぶほど、カキを愛してやまない人物である。

 マリンファームは1988年に国東市に開設。長らくカキの養殖技術や種苗技術の研究開発などを行っていた。そんな折、北海道で20年以上もカキの養殖技術開発などに打ち込んでいた加藤氏が縁あってマリンファームに入社してきた。2004年6月のことである。

 そこからマリンファームでのカキに対する取り組みが一気に加速する。2006年にカキやアサリなど二枚貝の種苗生産に必要な餌料(じりょう)を商品化、2012年には生物餌料を活用して陸上生産した二枚貝種苗の販売事業を開始した。

マリンファーム

 時を同じくして2012年、漁業の低迷に悩む国東市役所から市内のくるまえび養殖場跡地の活用方法についてヤンマーに相談が寄せられた。即座に加藤氏はカキの生産を提案。これまでヤンマーはカキ養殖の経験はなく、生産者に種苗を販売したり、海水ろ過システムを提供したりと、あくまで支援パートナーの立場だった。しかし、同社自身も従来のモノ売りからソリューション売りへとビジネスモデルを変革する最中にあって、生産者の立場で考えることが不可欠だと感じていたことや、漁業そのものの発展が自社のビジネス成長にもつながるといった考えから、実証実験を兼ねてカキ養殖に着手したのである。

 ただし、その実現には地元の漁業者の協力が不可欠だった。それまでマリンファームは地元との接点はほとんどなく、しかもカキという国東にとって前例のない魚介類に挑戦するということで、漁業者を巻き込むハードルは高かったが、幸いなことに市役所がその橋渡しを積極的に買って出た。最終的にはカキ作りに専任で取り組んでくれる漁業者も見つかったのである。


従来のカキ養殖とは異なるアプローチ

 いよいよ国東での新たなカキ作りが始まった。ヤンマーが目指すカキとは一体どのようなものだろうか。「くにさきOYSTER(オイスター)」というブランド名を付けたこのカキには、ほかとは大きく異なる特徴があるのだ。

マリンファーム所長の加藤元一氏

 その前に、日本で一般的なカキの養殖方法について説明しておこう。カキの幼生が活発な夏場、ロープひもや針金などにホタテガイの貝殻を固定し、それを海中に吊るすと、幼生が貝殻にどんどん付着する。その後はプランクトンなど餌が豊富な場所に放置しておけばカキが成長するので、それを収穫するというやり方だ。大きくてごつごつの殻がついた大量のカキをクレーンで海中から引き揚げるシーンを目にした人もいるだろう。

 これに対して、くにさきOYSTERは人工種苗生産である。陸上の設備で人工授精を行い、幼生を飼育する。さまざまな成長段階を経て、3ミリメートル程度の稚貝となったところで中間育成装置に移す。その後、20ミリメートルほどの大きさにして本格的に海で育てるという流れだ。

 さて、くにさきOYSTERは、上述したように、国内で一般的に流通するカキと比べて小ぶりのサイズである。それには生育期間がかかわっている。通常カキは6~9月に養殖を開始して出荷は翌年の冬と、少なくても約1年半かかる。一方で、くにさきOYSTERは、2~5月に養殖を始めて、12月から翌年4月には出荷できるようにしている。生育期間は単にサイズだけでなく、味わいにも大きく影響する。カキは産まれてからの期間が短いほど雑味の少ない、すっきりした味になるからだ。

 では、なぜ通常よりも短期間で出荷できるレベルのカキを生育することができるのだろうか。その理由の1つが、中間育成装置の活用に加え、干潟の漁場と海面(沖合)の漁場を組み合わせて生産しているからだ。干潟での養殖はカキの身を成長させる効果が、海面は殻を成長させる効果が強いため、組み合わせることで短い期間でバランスの取れた身入りのカキが作られる。くにさきOYSTERは、干潟で6センチメートルほどの大きさに育てたら海面にカキを移す。そしてある程度殻が大きくなったところで、出荷前に再び干潟に戻すというやり方を採用している。

干潟養殖で使用されているオーストラリア式のカゴ

カキの殻がぶつかり合って、丸く成型される仕組みに

 くにさきOYSTERは、殻が深いおわん型になっているのも特徴である。これにも秘密がある。干潟で養殖する際にオーストラリア式の技術を使った特殊なカゴを使っており、満潮時と干潮時の水面の変化でカキの殻がぶつかり合い、丸くきれいに成型されていくのである。また、産まれてから収穫するまで一粒一粒バラバラに動ける状態で育ったシングルシードのカキの種苗を用いているからこそ、1つ1つの形を整えることができるのだ。

 くにさきOYSTERのブランド価値を高めるためには、味わいだけでなく、見た目の美しさも重要だと加藤氏は考える。


精密ろ過海水の活用

 カキに関しては安全面を気にする人も多いだろう。冬の季節にはノロウイルス、夏場には腸炎ビブリオと、細菌やウイルスを体内に蓄積したカキを食べてしまった消費者が食中毒を起こすケースがしばしば見られる。安全・安心の確保は生産者にとって絶対的な条件なのだ。

 くにさきOYSTERは、2週間に1度、養殖海域の水質とカキを検査。その後、水揚げされたカキはノロウイルスの大きさよりも細かい膜でろ過した海水(精密ろ過海水)を使って20時間浄化する。これによって体内に残る細菌などが除去できるという。さらに出荷前にもロット単位で細菌やウイルスの検査を行い、検査結果が出るまでは精密ろ過海水でカキを保持する徹底ぶりだ。そうした検査によって細菌やウイルスが検出されなかったカキを商品として出荷しているのである。

 なお、くにさきOYSTERでは、種苗生産からすべての工程で精密ろ過海水を使用している。こうしたことが可能なのは、種苗からカキの生育、出荷までを一気通貫で取り組んでいるからこそである。


小さいカキでも売れるように

 このように、くにさきOYSTERの生産においては、一般的なカキ養殖では見られないような工夫が随所になされている。当然、そのための手間やコストも大きいはずだ。なぜここまでするのだろうか。そこには小ぶりでおいしいカキを作ることで世の中の価値観を変えるという加藤氏の並々ならぬ決意が込められている。

 「日本では大きい殻、大きい身のカキでないと高い値段ではなかなか売れません。そのためにわざわざもう1年寝かして、大きくしてから収穫する漁師もいるほどです。結局、1つのカキに費やす時間が余計にかかってしまい非効率です。小さなカキもおいしいぞという認知が広まり、商品価値が高まれば、参入する漁師も増えるし、もっと短いサイクルでカキの養殖ができるようになるでしょう」(加藤氏)

 さらに、小ぶりのカキを取り扱うレストランなどが増えれば、消費者もカキの選択肢が広がる。調理方法も、例えば、大ぶりのカキはメインに、小ぶりのカキは肉料理の添え物にとバリエーションができ、それが日本の食文化を変えることにつながるという。

 「くにさきOYSTERの意義は、国東という地域の特産ブランドとして確立し、この場所に新たな産業を育むことが一義的なポイントですが、その次の広がりとして、日本のカキに対する価値観や食文化を変えることで、生産者や産地にも多様性が生まれ、漁業が発展することではないかと考えています」(加藤氏)

「牡蠣Bar」のオーナー、泉祥子さん

 そのためには、小ぶりで売れるカキを作り、是が非でもくにさきOYSTERのビジネスを成功させねばらない。そうした強い気持ちを加藤氏は抱いている。

 この加藤氏の思いに共鳴する関係者は少なくない。その一人が、東京・銀座のオイスターバー「牡蠣Bar」のオーナー、泉祥子さんだ。泉さんは以前から店のお客向けにカキの勉強会を開いたり、産地の生産者との意見交換を行ったりと、カキの啓蒙活動に取り組んできた。数年前、あるイベントで加藤氏と出会ってから、加藤氏の考え方や取り組み、くにさきOYSTERそのものに魅せられた。すぐさま店での取り扱いを始めるとともに、くにさきOYSTERをはじめ、小ぶりのカキの普及にも力を注いでいる。

 「生産者に話を聞くと、小さなカキは売れないから、今までは自分たちで食べるか、場合によっては廃棄していたそうです。そうしたムダをなくすために、カキ1つ1つの価値を評価して、小さくてもきちんとした値付けをするようにしています」(泉さん)

 国内のカキ類の収穫量は下降の一途をたどっており、2015年は16万4380トンと、この10年で5万トン以上も減少した(出典:農林水産省、種苗養殖を除く)。こうした厳しい環境の中で、くにさきOYSTERの取り組みが花開き、日本のカキ産業全体が活性化することに大きな期待が集まっているのだ。





引用元の記事はこちら(http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1702/08/news052.html)


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