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柳前社長と「モトロイド」

2018年02月18日

「自律」バイクの目指す先は ヤマハ「モトロイド」

「東京モーターショー」で注目を集めた「モトロイド」

 2017年10月に開催された「第45回東京モーターショー」。ヤマハ発動機・ブースで行われたプレス・カンファレンスで、ひときわ注目を集めたのが、概念検証実験モデル「モトロイド(MOTOROiD)」でした。ヤマハ発動機の柳 弘之社長(当時)が少し離れたところから「Stand up!」と声をかけて合図を出すと、そのバイクのようなフォルムのマシンはゆらりと身体を揺らし、自ら起き上がったのです。さらに、手招きに応じて、自分でバイクスタンドを跳ね上げ、ゆっくり社長の元まで近づく「モトロイド」。説明のあいだ、大人しく社長の脇に控える姿も、「従順な相棒」といった風情。最後はそのままスーッと後ろに下がって、また自分でスタンドを出して停車したのです。これまでの「乗り物感」を超えたその動きに、各国メディアも大興奮。その後のフォトセッションでは、実車になかなか近づけないほどの人気ぶりでした。

【画像】なぜ倒れない? 「モトロイド」自律システム概要図

 今回は、そんな「モトロイド」の誕生秘話や現在の様子など、詳しくうかがうべく、静岡県磐田市にあるヤマハ発動機の本社を訪ねました。出迎えてくださったのは、開発を担当した技術本部の浅村欣司主査と、川島雅也主事です。

「そもそも『モトロイド』は、『新しい価値を生み出すモビリティを考えよう』という社内の活動の中で生まれたアイデアでした。最初に『乗りものの生きもの化』というコンセプトが挙がったのです」(川島さん)。バイクを『アイアンホース』(馬が進化したものという例え方)と呼ぶことがありますが、実際に生きている感覚が得られる乗りものというのは、どんな姿で、どんな機能を備えているか、という発想からスタートしたのだそうです。


「モトロイド」開発に携わった、ヤマハ発動機 技術本部の浅村欣司主査(右)と、川島雅也主事(2018年1月31日、大西紀江撮影)。
「機械」を生きているように感じさせるには?

 では、その『乗りものの生きもの化』という概念を、具体的にどう実現したらいいのでしょうか。

「プロジェクト初期には、『本物の馬みたいな見た目のものを作る』という話もありましたが、そういうことではないですよね。人に『この機械は生きている』と感じさせる要素というのがいくつかあるはずだ、と。それは、機械そのものが自律して動く様子、所作。簡単に言うと、『呼んだら自分で立ち上がってこっちに来る』ということだ、という結論に至ったのです」(川島さん)。

 それを実現させるために必要なふたつの技術を、「モトロイド」は搭載しています。まず、自分で重心移動して立ち上がるという「自律機能」。そして、オーナーの顔を認証して指示に応えるという「AI機能」です。

 ひとつめの「自律機能」を実現したのは、AMCES(アムセス)というヤマハ独自の技術です。

「『重心を移動してバイクを自立させる』という考え方は、社内に10年以上前からありました。でも、それは『ただ立っている』という考え方。バイクの『自立』機能だけなら、これまでにもある技術です。それだけでは感動はないのでは、と私は感じました。そこから、重心移動をする可動範囲を広げることで、自分で起き上がって『自律』することが可能ではないか、というところに繋がったのです」(浅村さん)。

 実際、その「起き上がり」の様子こそが、会場での驚きと興奮を呼んだのだと、現場にいて感じました。


自律とAIが必要なワケ

「『AMCES』は、マシンの車体中心を貫く軸を回転させて、バッテリーやリヤのホイール周りなどの位置を変え、重心を移動させてバランスをとるものです。言葉にすると難しいですが、機構としてはごくシンプルで、振子と同じ要領です。バッテリーなどをおもりにして、『倒れそうなものの反対に重心を動かせば倒れない』というのを繰り返し、揺れがだんだん小さくなって次第に安定するという原理です」(浅村さん)。

 動きとしては、『やじろべえ』を想像していただけると分かりやすいかもしれません。ただ、実際に見ると「そこが動くか!?」というパーツの意外さと、一瞬両手を差し出したくなるほど大きく揺らぐ様子に、釘付けになります。さらにその仕草は非常に生き物っぽく、まさに大型動物の立ち上がり方そのものという感じです。

 もうひとつの技術は、「画像認証AI」。マシンのフロント部分に2眼カメラを搭載し、顔認証機能でオーナーを認識して、その指示に従うというものです。また、ジェスチャー認識機能も備え、手招きや停車の合図に反応して動作します。顔認証というセキュリティの高さはもちろんですが、「手招きしたら自分の所にマシンがやってくる」という高揚感がたまらない機構となっています。

「本来はオーナーしか認識しませんが、ショーなどのデモ用には、誰でも動かせるモードにして、ジェスチャーコントロールを体験してもらっています。これが好評で、実際にやると愛着が深まるんですよね。私たちでさえ、最初にやった時はなんとも言えない感動がありました」(浅村さん)。

 それはそうでしょう、これは一度、体験してみたいものです。ただ、ごく稀に、うまくできない人もいるのだそう。ジェスチャーの出し方によって認識されない、ということなのですが、なんだかそれも生き物っぽくてワクワクします。さらに、川島さんの「『モトロイド』、浅村さんの言うことはよく聞くんですよね」という発言に、浅村さんが照れくさそうにしている姿を見て、うらやましさがさらに高まりました。


開発期間は7か月! そしてお披露目へ

 そもそも、「モトロイド」のプロジェクトはいつ頃始まったのでしょう。企画がスタートしたのは、2016年のこと。最初の半年は、川島さんひとりで概念の検証をされていたそうです。その後、「AMCES」や「画像認証AI」の先行技術検証にかかり、「モトロイド」チームとしては、2017年2月にキック・オフ。それが同年9月には、役員プレゼンにかかっていたという、驚きのスピード展開だったのだそうです。メンバーは、社内の企画、設計、実験、制御、デザインの5つの部門から20~30人が集まりました。

「今回は、私が関わっている3D設計プロセスを考えるチームに『モトロイド』を組み込んで、3D CADのテクノロジーを使っていかに短期で開発をするかというトライアルを兼ねていたのです。もうひとつ、『モトロイド』は生産車ではなく、『観念検証実験機』というかたちなので、実車化に伴うテストを大幅に省略しています」(浅村さん)。さらに、ヤマハという会社が持つ自由で柔軟な風土、そして「オープンイノベーション」として外部の技術協力を得たことで、「モトロイド」は、あっという間に私たちの前に登場することとなったのです。

 初お披露目の「東京モーターショー」で大好評だった「モトロイド」。川島さんによると、出展にはひとつの不安があった、というのです。「『もしかすると、バイク好きには好まれないのでは』という懸念がありました。でも、そんなことは全くなく、むしろ、予想外の好反応がありました」(川島さん)。

 好反応のひとつは、「モトロイド」の今までにない魅力による、新しい層からの支持でした。これまでバイクに興味がなく、免許も持っていないような10代、20代の若者が強い反応を示したということです。「『生き物』という、これまでのバイクにない価値観に興味を持ってもらうことで、新しい接点ができたと感じています」(川島さん)。実は、「東京モーターショー」の際、「モトロイド」の動きは、わざとゆっくりさせて、生き物らしさを出したのだそうです。「柳社長の呼びかけに応じてゆっくりと身体を起こしたように見せるために、意識的に間を持たせた設定にしていたのです」(浅村さん)。あの動きはAMCESの都合ではなく、演出だったという新事実。驚きです。


世間はどう見たか、もうひとつの好反応とは

 好反応のもうひとつ、これは開発者からは意外だったそうですが、安全性への期待値の高さでした。

「バイクは停止時、かなり重量感があります。今回、『AMCESのような自律機構があれば転ぶ心配がないのでは』という反応が多くありました。特に、ずっとバイクが好きで乗り続けてきた年配の方が『体力の低下で諦めていた』というところに出てきたこの新技術に、期待感が生まれたようです。長年のバイク・ファンから、こうした形でいい反応を得たのは嬉しかったですね」(川島さん)。

 これはバイクにまつわる「危ない」というネガティブイメージにも好影響なようで、「こういう機構があればバイクに乗り続けることを家族(特に奥様)に説得しやすい」という声も聞かれたそうです。

「ただ、『モトロイド』=生産車とは思っていないのです。これは、『POC(プルーフ・オブ・コンセプト)』(ある機能に特化して研究し、その実現性を検証するためのもの)なので、この技術が今後どんな風に技術応用されるのか、組み合わせも含めて、何ができるか考えているところです」と川島さん。ヤマハの今後の市販車に、期待したいところです。

「東京モーターショー2017」後、米国ラスベガスで行われた「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショウ)2018」にも出展し、世界中のメディアから取材を受けたという「モトロイド」。アメリカというと、往年のTVドラマ『ナイトライダー』になぞらえた方も多かったのでは、とうかがってみると、「育った場所や世代で、捉え方は違うようですね」と川島さん。


「モトロイド」の開発には『人と機械の関係性を変える』というテーマもあったという川島さん(2018年1月31日、大西紀江撮影)。
根底に「生きものに乗ることへのあこがれ」?

 ちなみに国内では、「ナイト2000」(編集部注:『ナイトライダー』に登場する主人公のパートナーで、人工知能を搭載した自律行動可能なクルマ)と共に、もう少し上の世代からは「『スーパージェッター』(編集部注:1965〈昭和40〉年から翌年にかけTBS系列局で放映されていたSFアニメ)の『流星号』」の名前があがるのだそうです。

「若い方からは、『キノの旅』(編集部注:2000年より電撃文庫にて刊行されているライトノベルおよびそれを原作とするアニメ。主人公の乗る二輪車が人語を話す)という作品名も聞きました。そもそも、『名犬ジョリー』ですとか、『もののけ姫』など、人は『生きものに乗る』ということに憧れがあるのではないでしょうか。『モトロイド』にも固まったイメージがあるより、見た方それぞれがイメージを膨らませて判断してくれるといい、と思っています」(川島さん)

 ちなみに、川島さんの原体験は「『バビル2世』(編集部注:1971〈昭和46〉年に発表された横山光輝原作の漫画およびアニメ)のロデム(編集部注:普段は黒ヒョウの姿をとる、どんな姿にも変身できる生命体)」だそうです。そう考えると、人は乗り物に、愛着や信頼関係といった感情を求め続けてきたのかもしれません。

「『モトロイド』の開発には、『人と機械の関係性を変える』というテーマもありました。ヤマハ発動機には、『人機官能』という開発思想があり、ヤマハ・ブランドとして出すものには、必ずその思想が入っています。例えばステアリングやエンジンフィールなど、人と機械には接点がありますが、この接点に感動を生み出すというのが、我々のプロダクトである、と考えています。そこをもう少し先の目線で見た時に、どう新しい関係性を作れば、よりお客様とプロダクトの絆が深まるか。これが、最も考えている部分です」(川島さん)。

 今後、人間とモビリティの関係はどのように進化、そして深化していくのでしょう。後年、乗り物の歴史を振り返るった時、「モトロイド」の存在はとても大きいものになっているのではないかと思います。





引用元の記事はこちら(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180217-00010003-norimono-bus_all)


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